ゲーム理論の「囚人のジレンマ」から牛丼業界の低価格戦略について考えてみる
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こんにちは。いもけんぴです。
今回の記事は前回の記事の続きになります。前回の記事を読んでいない方はよかったらこちらの記事も読んでみてください。
前回の記事では、「低価格戦略は結果的に取るべきでない戦略」であるという事を説明しました。低価格でたくさんの商品を売っていく薄利多売戦略は結果的に労働環境の悪化と人件費の引き上げにつながり、最終的に商品を元の値段に戻さないといけないことがわかりました。
では、なぜ戦略的に悪手である戦法を企業は取ってしまうのでしょうか?少し調べてみましたのでよかったらご覧ください。
ゲーム理論から見る企業の選択
ゲーム理論という言葉を知っているでしょうか。ゲーム理論とは自分と相手がいるとき自分はどの選択肢を取るのが合理的なのか(利潤が一番大きいのか)を考えていく分野です。「囚人のジレンマ」はゲーム理論で有名な問題です。
囚人のジレンマとは
犯罪を犯した集団が「自白」か「黙秘」を迫られる。集団で黙秘したほうがいいが、もし他の誰かが自白した場合黙秘していた人は重刑になる。自白した人は罪が軽くなる。このような状況で、集団で黙秘したほうがいいのにかかわらず誰かが自白するかもしれない状況では自分のために全員が自白を選んでしまうというジレンマ。
ゲーム理論的に考えると、企業は低価格戦略を取るべきではないとわかっていても、結果的に業界全体で低価格戦略を取ってしまうというのがまさに牛丼業界なのです。簡単に図で説明していきます。
場合分けして考えていきます。このように牛丼業界が仮に自社とライバル社の2つの場合で考えていきます。
企業Aと企業Bが商品の値上げをする場合、両企業に利潤が増加します。しかし、先に値上げをするとライバル社の利潤が増えてしまうのでこの状態になるのはめったにないと思われます。また、両企業が値段の変更をしない現状維持の場合は両企業の利潤は変化しません。
企業Aが値上げをしている中、企業Bが値下げを突然したらどうでしょうか?企業Aは商品の値段が高いのでお客さんの需要は企業Bに向かいます。すると、企業Aは損失を食らってしまうので仕方なく企業Bが設定している価格まで下げざるを得ません。価格を下げないと自社が損失を被り、ライバル社が得をしてしまうからです。これは企業Aと企業Bの立場が逆でも同じことが言えます。
つまり、どちらかが値下げをしたらもう片方の企業は値下げをせざるを得なくなります。なぜ値下げの戦略をとる企業が出てくるのかと言うと、単純に値下げをすれば他社からの顧客を奪うことができるからです。
市場では低価格にする(他者を裏切る)メリットがあります。全企業が協力して値下げをしないようにすればこのようなことは起こりませんが、裏切りのインセンティブがある以上低価格戦略は魅力的に映るのかもしれません。どこかの企業が低価格戦略を行えば、他社も損失を恐れて追随する形で低価格戦略を取ります。すると、図の右下のような状況になります。
牛丼の薄利多売とゲーム理論
ゲーム理論で当てはめて考えてみると、牛丼チェーン店が低価格戦略を取るのは合理的になります。もちろん最初からよくない結末になると知っているでしょうが、自社の損失を減らすためにこのような戦略を取るのは仕方のないことと言えます。
僕も大学の学際で屋台をやっていましたが、ライバルの屋台より集客しようと低価格で出し物を売った結果、そんなに売り上げがよくなかったということがありました。低価格戦略を取ればたくさん売らないといけないので、人件費のコストと材料費が多くなってしまいますね。低価格戦略は魅力的ですが、長続きはしないのかもしれません。
牛丼業界のこのような動きはゲーム理論の「囚人のジレンマ」とそっくりです。ダメだとわかっていてもせざるを得ない、というのが面白いポイントですね。選択が合理的に見えないのに実は理に適った選択をしているというところももどかしいところです。
まとめ
ゲーム理論観点からまとめると
・他社が低価格戦略を取った場合自社が損失を受ける
・損失を受けないために自社も低価格戦略をとる
・低価格戦略は一時的に利潤を生むので選択肢として取る場合がある
・企業はゲーム理論的に間違っていない選択をしている
このような戦略的思考と葛藤が入り混じって、牛丼業界の低価格戦略の戦いはあるのだと思います。利益を生みたいのに結果的に業界全体で苦しみあうというのは安い牛丼ならではのジレンマなのですかね。
可哀想な気もしますが、そのおかげで安い牛丼を食べれているわけでもあります。(笑)
ただ、会社からすると苦しいでしょうね・・・
皆さんも牛丼を食べてあげてください。(笑)
そんな感じで今回は終わります!最後まで読んでいただきありがとうございました!
それでは('ω')ノ